2005年(平成17年)5月9日。希望していたゴールデンウィークには退院する事が出来なかったものの、やっとのことで退院の日を迎える事が出来ました。

私はこの数日前から『ゴールデンウィークはどこへも連れて行けなかったから、退院の日には孫達を連れてイチゴ狩りにでも行こう!』と妻に話し、その事を妻が子ども達に連絡してくれていました。

『孫達もイチゴが大好きだから、とても喜んでいるよ!』

私はそんな事を聞いていたので、退院の日がますます楽しみでした。

イチゴ狩りへ向かう途中、スピード違反で・・・。

我が家へ戻ると、妻と孫が待っていてくれました。

入院の荷物をさっさと片付け、私の運転で久々のドライブに出発!

イチゴ狩りへ向かう途中に末娘の家があるので、まずはそちらに立ち寄ってからという予定でした。

紅葉の季節とは違って、新緑の季節も実に気持ち良く、私は自然のパワーから生きる力をもらっているように感じました。

しばらく山道を走ると、車の窓から一気に広い街並みが!

『ワッ!すごい!』孫も大喜びでした。

私も久しぶりの開放感に浸かり、ウキウキと気持ち良く運転したところでした。

すると突然、《止まれ》の旗を持った警察官が。

聞くとスピード違反だとの事。

しかし、いくら私がウキウキしていたからといって、そのあたりは気をつけて、55キロくらいで走っていたはずでした。なのにどうしてと思い聞いてみると『この道路は最高速度40キロです。』との事。

久々の退院、ドライブでスピード違反:肝臓がん末期闘病記

『こちらへ来て下さい。』

警察官の指示で道脇へ。

私は車の中に家族を残し、少し離れた警察のワンボックスカーに入り、スピード違反の書類を書くはめになってしまいました。

こんなに見晴らしが良く、道幅が広い道路で最高時速が40キロとは・・・。

私にとっては、20数年ぶりの交通違反でした。

長い入院生活を終えてやっと退院した日にこんな事になるなんて・・・。

車に戻ると私のしょぼくれた顔を見て、『高いイチゴ狩りになっちゃったね。』と皆で笑っていました。

そして楽しいイチゴ狩り

そんなアクシデントはあったものの、何とか目的地に到着。

その辺り一帯は【イチゴ狩り農園】だらけで、どの農園に入ろうかと迷うくらい、多くのビニールハウスが立ち並んでいました。

私達は、一番手前のビニールハウスへ入ってみる事にしました。

ビニールハウスの中はとても暖かく、当然の事と言えば、当然の事なのであるが、中にはいっぱいのイチゴがなっていて、イチゴの甘い香りが漂っていました。

久々の退院で孫を連れてイチゴ狩りへ:肝臓がん末期闘病記

私達は受付を済ませ、思い思いの場所でイチゴを摘んで食べ始めました。

『じいちゃん!コレ、大きいね!』

と孫が指したイチゴを取ってあげると、孫は美味しそうに食べていました。

『あっ!ここにもあった!ここにもだよ!』

孫が興奮気味に言ってくるので、私はその度に取って食べさせてあげました。

そんな食べ方をしていたので、私も孫もすぐにギブアップの状態になってしまいました。

この時、味覚の変化で苦しんでいた私にも、甘いイチゴは『美味い!』と感じながら食べることが出来ました。

また、イチゴというのは想像以上に食べられないものだと言うことがよく分かりました。

孫も食べるのを止め、ベンチでゴロゴロしていました。

『もっとイチゴ、食べるかい?』

『もういらない。』

イチゴが何よりも好きな孫でしたが、その後しばらくは家でもイチゴを食べたがらなかったそうです。

今度は赤飯で胸やけ・・・。

イチゴで腹一杯になった私達は次に道の駅の物産店に行きました。

物産展には地域の珍しいものがたくさんあって、見ていても飽きませんでした。

皆でそれぞれ好きな弁当を買って行こうということになり、私は味覚が変わっていたため、何が食べられるか見ただけではよくわかりませんでしたが、その中でも【赤飯】がとても美味そうに見えたので、久しぶりに食べてみようと思い、私は赤飯にしました。

皆イチゴで腹いっぱいで、すぐには食べられないので、結局、帰り途中の末娘の家で食べることにしました。

末娘の家に着くと、いくらか食欲も出てきたようだったので、皆で買ってきた弁当を広げました。

皆でそれぞれの弁当を少しずつつまみ始めました。

病院食とは違い、どれも美味しそうには見えるのですが、実際に食べてみるとやはり美味く感じられません。

そこで、最後に赤飯を食べてみました。

久々の赤飯で胸焼け:肝臓がん末期闘病記

「美味い!美味しく食べられる!」

私は、まるで私の退院をお祝いしてくれているかのように思いました。

『赤飯は消化が悪いから、あまり食べ過ぎない方が良いよ。』

『少しくらいだから大丈夫だよ。』

私は美味しく食べられる嬉しさも手伝って、半分くらい食べきっていました。

すると今度は妻が心配していた通り、【胸やけ】を感じるように。

「しばらくすれば治まるだろう。」と思っていましたが、胸やけは時間が経てば経つほどひどくなるばかりでした。

『ホラ、私が言ったとおりでしょう。』

悔しいがその通りでした。

末娘の家を出る頃には、車の運転が出来ない程、胸やけが酷くなってしまい、娘婿に運転を代わってもらって帰りました。

考えてみれば、退院したこの日の朝まで病院食で、しかも【おかゆ】を食べていたのです。

そこへいきなり消化の悪い赤飯を流し込まれたのだから、胃もビックリしてしまったのだと思います。

20数年ぶりのスピード違反や、赤飯の胸やけなどで、大変な一日でしたが、イチゴ狩りは大好評で、久々に家族で楽しい時間を過ごす事が出来ました。

それにしても、この時食べた赤飯は本当に美味かったです。