2004年(平成16年)4月9日
この日は肝臓移植のための入院の案内の電話が大学病院から来る予定の日でした。

この時、私は既に肝臓移植を断る事を決心していましたので、そのための入院も断る事を決めていました。

体調的には良くも悪くもない状態でした。
と言う事は、悪い状態が進行していないと言う事で、それは癌の進行にブレーキがかかり始めていると考えられる、そう思っていました。

断ることを再度妻に伝える

「今日は大学病院から電話がかかってくる日だな。電話が来たらオレ、肝臓移植を断ろうと思っているんだけど。」

食事の支度をしている妻に再度、断ることを伝えました。

「本気で言ってるの?もう入院や他の手続きも済ませてあるのに今更無理だよ。」

それまでも何度か肝臓移植を断る事について妻には話していましたがまさか本気だとは思っていなかったのかも知れません。

本気で話している私に妻は困惑気味でした。

『申し訳ありませんが、肝臓移植は止めようと思います。』

そんな時、いきなり電話が鳴りました。

私達は会話が止まり、顔を見合わせました。一呼吸おいてから私が電話をとりました。

やはり電話は大学病院からで、入院の案内と説明を始めました。

私は、説明が始まってすぐ、話しを遮るように言い始めました。

『すみません。申し訳ありませんが、肝臓移植は止めようと思います。』

『そ、そんな大事な事、私に言われても困ります。一度、大学病院の方へ来て頂いて、先生と直接お話しをして頂けますか?』

『はい。分かりました。』

『ただ、先生は今週は病院にお見えにならない予定になっております。一週間後が先生の診察日になりますので、その日に来て頂けますか?』

『分かりました。一週間後に伺います。』

『お身体の方は大丈夫ですか?大学病院まで来られますか?』

『ありがとうございます。行けますから大丈夫ですよ。』

その方は困惑されながらも私の身体を気遣ってくれ、私も丁寧に話しをし、電話を切りました。

『これからどうするつもりなの?!』

『お父さん、これから先、どうするつもりなの?もし具合でも悪くなったら、もう治療をしてくれる病院が無いよ。』

私が電話を切った後、電話のやり取りを聞いていた妻は困惑していました。

困惑してしまいました。:肝臓がん末期闘病記

『大丈夫。お母さんの食事と、この健康食品でやってみるよ。もしそれでダメだったとしてももう、それはそれで良いから。』

妻、そして子ども達が探してきてくれた私を生かすための唯一の方法、肝臓移植を予約までしておきながら直前になって断ってしまって本当に申し訳ないという気持ちはもちろん強くありました。

しばらく無言で落胆している妻に私はかける言葉が見つかりませんでした。

しかし、これが【家族全体の最善策】と私なりに考え抜いた結果でした。


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