2005年(平成17年)1月、私は点滴を受けるため毎日、病院に通っていました。
点滴は数時間かかるため、私は病院に置いてある雑誌を良く借りて読んでいました。
ある日借りた雑誌の中で、近所でワカサギが釣れる人工湖が紹介されていました。
当時の私は3ヶ月間という長期の入院生活から解放されたばかりだったこともあり、リフレッシュを兼ねてワカサギ釣りに行こうと家に帰ってから妻に話してみました。
妻も賛同してくれ、早速次の日曜日にまずは下見に行ってみようという事になりました。
この時は、都合がついた長男と孫、末娘も一緒に行きました。
良く釣れていました!
そして日曜日。私は久々のドライブで気分爽快、孫達も楽しそうでした。
ワカサギ釣りの人工湖に着いたのは午後3時頃。その時間帯でも多くの人がいました。
早速私達は、湖の周りを歩きながら、釣りをしている人達の様子を見て回りました。
『どうです?釣れましたか?』
『ええ。今まで来た中で今日が一番釣れたかな!』
この日は皆さん、本当に良く釣れていたようで、いっぱいのワカサギを見て、孫も大喜びでした。
『よし!次は竿を持って来よう!』
次の日曜日にまた来ることにしてこの日は帰る事にしました。
帰りの車の中では、さっき見せてもらったいっぱいのワカサギを想像しながら、『○○にして食べよう!』とか、『いや、△△にして食べるのも美味いぞ!』などと、それはもう盛り上がっていました。
1週間楽しみながら過ごす
遊びの計画が決まると、毎日の点滴も前向きに受けようと思うから不思議である。
それ程、この時の1週間はとても楽しみながら過ごしていました。
20年ぶりとなるワカサギ釣りを楽しみにしていた日々、私は子ども達がまだ小学生だった頃の事を思い出しました。
当時、我が家ではアヒルを飼っていました。アヒルの餌にするため、よく近所の河原で子ども達を連れて魚釣りに出かけたものでした。
あの頃は面白いように魚が釣れたものでした。
病院での点滴が終わると、帰りに釣具店に立ち寄る事が多くなりました。これがまた、楽しい。
とりあえず2人分の釣り道具を買い、釣り竿の先が更にしなやかになるように小細工を施したりしました。
そんな事に夢中になっていると、溜まっていたストレスなどどこかに吹き飛んでしまったようでした。
なにかに夢中になることが、こんなにもスッキリすることだとは思いませんでした。
そしてワカサギ釣り当日
そして楽しみにしていたワカサギ釣り当日の日曜日。朝6時半頃家を出ました。この日は娘と2人で出かけました。
家を出る時妻には、『天ぷらの用意をして待っているから沢山釣ってきてね!』と冗談交じりに言われました。
湖に到着すると、既に多くの釣り客でいっぱいになっていました。
あれ?釣れない・・・
私と娘は空いている場所を見つけ、持ってきた座布団を敷くと、早速、釣り糸を垂らしました。
私の気持ちはこの時、最高潮でした。
『・・・。』
10分、20分と時間が過ぎても竿はピクリともしません。
『お父さん、ちょっと他の人の様子を見てくるからな。』
そう言って私は近くの人の様子を見に行って愕然としてしまいました。
なんと、この日は他の釣り客もほとんど釣れていなかったからです。
釣れていたとしても、小さいワカサギが数匹。先週とは大きな違いでした。
何となく嫌な予感を感じながら昼食で近くの食道へ。
午後は場所を変えて釣ってみました。
しかし、やはり釣れません。
近くでボート釣りをしていた人は昼寝を始めてしまう程でした。
ワカサギの産卵期に入ったのかも・・・
『先週は結構釣れていたみたいですけど、今日はなんでこんなに釣れないのですかね。』
私は近くの人に話しかけて見ました。
『ワカサギの産卵期に入ったのかも知れませんね。』
ワカサギの産卵期? 初めて聞く内容でした。
しかもワカサギの産卵期には、どうやら全く釣れないらしいのです。
結局、私も娘もボーズ(ゼロ)。本当にガッカリしてしまいました。
それにしても、2人そろって1匹も釣れないとは・・・想像すらしていませんでした。
楽しかったが高い【授業料】でした
『どお?!釣れた?』
家に着くと妻が、本気とも冗談とも取れる顔で迎えてくれました。
結局この日はワカサギが食卓に乗る事はありませんでした。
それからしばらくしたある日、皆でスーパーへ買物へ行く機会があり、店内を歩いていると、少し離れたところから娘が私を呼んで手招きをしていました。
行ってみると、魚コーナーの前でワカサギが『山盛り1皿500円』で売られていました。
ちなみに私は
:釣具一式 10,000円
:入漁料金 2,500円×2人分
その他、交通費も入れると、ワカサギ釣りに【約20,000円】ほど費やしていました。
それなりに楽しませてもらったし、良い思い出にもなりましたが、ずいぶんと高い授業料を払ってしまったものだと思いました。
また、あの闘病生活の中、あんな寒いところへよく行ったものだとも思っています。