人の死で『ここは病院なんだ』と改めて思う事がありました。

夜中に急に慌ただしくなった看護師さん

初めての入院から2週間ほど経ったある日の夜の事でした。

その時の病室は個室で、私はいつの間にか眠りにつき、その夜中、看護師さん達の慌ただしい声で目が覚めました。

看護師さんの声は隣りの病室から聞こえてきていました。

廊下を足早に過ぎていく足音がとても慌ただしい様子で、夜中の廊下に響き渡っていました。

私は真っ暗な病室で一人、とても心細い気持ちでした。

と同時に『何事が起ったのだろう』と病室の電気を付けました。

○○さん!○○さん!大丈夫?!

私が病室の電気を付けたと同時位に隣りの病室から看護師さんの大きな声が聞こえて来ました。

『○○さん!○○さん!大丈夫?!』看護師さんはしきりに声をかけているようでした。

その時、私は隣りの患者さんの病状が急変して亡くなってしまったのだと察しました。

『個室』に不安を抱く

私はこの時初めて病室の『個室』というものについて考えました。

『個室』というと聞こえは良いのですが、特に患者さん側の要望も無く個室に入るという事は、それなりに病状が思い患者さんが入る事が多いのではと。

実際、私はこの時、全くそのような状況でした。

特に自分から個室を希望した訳ではありませんでした。

しかも、私は当時、『肝臓がん』を告知されていました。

余命宣告こそ、直接はされていませんでしたが、そんな『個室』について考えてしまうと、『もしかしてもう、自分は助からないのか。』と考えてしまいました。

自分もある日突然、肝臓ガンが急変して隣りの感謝さんのようになってしまうのではないかと、夜中に一人、不安で不安で仕方がありませんでした。

私は気を紛らわすためテレビのスイッチを入れました。

隣りの病室ではしばらくの間、慌ただしく行き来がありました。

この日は本当に長い長い夜でした。

翌朝は普段と変わらない看護師さんでした

翌朝、看護師さんが私に言いました。

『笹野さん、昨夜はごめんなさいね。うるさくて眠れなかったでしょう。』

そこにはいつもと変わらない笑顔の看護師さんがいました。

私は状況を察していたので、特に何も聞かず『大丈夫でしたよ。』とだけ答えました。

看護師さんという仕事は本当に大変だと思いました。

そしてまた、『ここは病院なのだ。いつ誰が急変して亡くなっても不思議ではない病院なのだ。』と思い知らされました。

慌ただしく動く看護師達:肝臓がん末期闘病記