正月もあっという間に過ぎ、私は工場内の道具などをコツコツと片付ける毎日でした。

そして、2月の中旬、私の体から胆汁のチューブが抜けてから3ヶ月が経ち、初めての血液検査の時期がやってきました。


病院内は相変わらず、患者さん達でどの科もいっぱいでした。

私が診察を受ける外科も、座るところが無い程、患者さんで混雑していました。

受付を済ませ、診察室から少し離れたイスに腰掛けて待つことにしました。


ここからは、待合室全体が見渡せました。

どの人も不安な表情で順番を待っていました。

診察が終わり、診察室から出てくる人の表情も暗く、闘病中は私もこのような表情の患者さんを多く見てきました。

病気に対する戸惑いと不安は、他人には計り知れないものだと思います。

久々の診察

2時間近く経って、ようやく私の順番が回って来ました。

診察室に入ると、主治医が開口一番、『笹野さん、お久しぶりです。まるで別人のようですね。お元気そうで何よりです。』と言ってくれました。

お世話になった看護師さんも笑いながら『本当にお元気そうですね。』と口を揃えていました。

医師と患者にしてみれば、こういう光景が一番望ましいものだと思います。

しかし、現実はそんなに甘くありません。

きっと私は特別な例になるのだろうと思います。

『今日の血液検査の結果が出るのは1週間後になります。』

もし、今日行うAFPという肝臓ガンの腫瘍マーカーの数値が正常範囲内であれば、CT検査でほぼ消えかかっていた腫瘍が消滅しているかもしれない。

私はそんな期待もあって、検査を受けるのが嬉しいような気分でした。
チューブが抜けた痕に関しては、問題なしとされました。

次に、主治医はお腹を軽く押しながら、『ガンは良くなっても、肝硬変は治らないので、あまり無理をしないように。』と釘をさしました。

しかし私は「命を奪ってしまうガンが治りさえすれば、今はそれだけで良い」と思っていました。

とにかく1週間後には、血液検査の結果を見て、主治医が判断してくれると思います。

あとは良い結果が出ることを祈るだけだと思いました。
病院内:肝臓ガン末期闘病記


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