バルーン手術が出来るか否かの検査当日、この日は朝から妻も病室に来てくれました。

しばらくすると看護師さんが迎えに来ました。

妻は『チューブが抜ける事を願っているね。』と励ましてくれました。

1回目の造影剤注入

検査室には4人の人がいました。少しするとモニター室から先生が出てきて言いました。

『笹野さん、検査を始めますね。まず最初に造影剤を注入します。』

これが1回目の造影剤注入でした。造影剤が注入されると全身が《カーッ》と熱くなるのを感じました。

先生は造影剤を入れ終わるとモニター室に戻り、映像を観ながら何やら話し合っていました。

『どうか2か3でありますように。』私は祈っていました。

先生は私に結果を数字で教えてくれる事になっていました。

  1. バルーン手術【不可能】
  2. バルーン手術【可能】
  3. 手術をしなくてもチューブを外せる【胆管が正常に戻っている】

しばらくすると先生がモニター室から出てきました。

『笹野さん、もう一度造影剤を入れて検査をしたのですが。』

私は検査結果の報告を期待していただけに正直、拍子抜けしたような感じではありましたが、先生にそう言われたら『はい。分かりました。』と言うしかありません。

『そうですか。わかりました。』

2回目の造影剤注入

そして2度目の造影剤注入。また全身が熱くなりました。

そして先生はまたモニター室へ。

室内でまたメーカーの方と話し合った後、先生が出てきました。

今度こそ検査結果の報告だと私は緊張すらしていました。

『笹野さん。』

『はい。』

『もう一回だけ造影剤を入れてみたいのですが。』

『あ、そうですか。はい、分かりました。』

『身体の方は大丈夫ですか。』

『はい。大丈夫です。』と言うしかありません。

しかしこの一言が私の闘病生活を一気に悪い方向へ進めてしまいました。でも一般素人にそんな事など分かるはずもありませんでした。

そして3回目の造影剤注入

3回目の造影剤注入。やはり身体が《カーッ》と熱くなりました。

先生はモニター室で話し合った後、出てきました。

『今度こそ!』私は期待と不安でドキドキしていました。

『笹野さん、【3】です。』
(3:手術をしなくてもチューブを外せる【胆管が正常に戻っている】)

『3ですか?! やったー!良かった!』私は思わず声を上げてしまいました。

しかし間髪入れずに次の瞬間、『ごめん。笹野さん間違えた。【3】じゃなくて【1】だった。』

『えっ?【1】?』
(1:バルーン手術【不可能】)

憤り、落胆、力が抜ける

この時の先生の言い間違え、ここには書けないほどの憤りの感情がこみ上げてきました。

私は先生の言い間違えで天国から一瞬にして地獄へ突き落されたような気持ちでした。

『そもそもなんでわざわざ結果を数字で伝える必要があるのか?しかも結果を正反対に間違えるなんて。あり得ない!』

この時の私の落胆はそれは酷いものでした。身体の力がすっかり抜けてしまいました。

造影剤を【3回】も注入されながら、バルーン手術は【不可】と言う最悪の検査結果への落胆と、先生の間違えに腹立たしさを感じながら私は診察台から降り、手術着からパジャマに着替えました。

あまりに力無く感じたのでしょう、看護師さんは『車いすを持ってきましょうか?』と声をかけてくれました。

『ありがとう。大丈夫ですよ。歩いて病室に行けるから。』

検査室の外では妻が待っていてくれました。

『ダメだったよ。胆管はまだ詰まったままで、広げる手術は無理だって。』

『そう、残念だったね。病室に戻る?』

『気分転換にタバコ吸ってから戻るかな。』

『今は止めた方が良いよ。また改めて後で行きなよ。』

私は妻の言うとおり、タバコはまた後でにして一旦病室に戻る事にしました。

妻も口には出さないものの、落胆しているようでした。


⇒次ページ 29:造影剤の副作用で突然寒気と吐き気と腹痛に襲われる
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