カテーテル手術を受けてから約1週間、抗がん剤治療はなかなか始まりませんでした。

そんな時、肝臓移植、しかも肝臓提供者として妻が申し出る、そんな話しがありました。

その頃の私と言えば、これから始まる抗がん剤治療に備えて免疫力を少しでも上げるため、K県の病院のサプリメントを飲み自分なりに抗がん剤治療の準備をしていました。

主治医の肝臓移植の話しに驚く

ある日の夕方、妻や子ども達が揃ってお見舞いに来てくれました。

皆が揃って来てくれる事はとても珍しい事だったので私は何か不思議に思い、「今日はみんな揃ってどうしたんだ?!」と聞いてみました。

ふと気付くと、逆にいつも来てくれる孫達の姿がありません。

「あれ?今日は孫達はいないのか?」

そんな私を見て妻は唐突に言いました。

「お父さん、主治医の先生から話しがあるから行こう。」

私はもちろん皆がいつもの雰囲気では無いことは十分に感じていました。この時は、察しがつかず、恐怖のような不安のような気持ちすら感じていました。

私は妻の言う通り、家族と一緒に主治医のところに向かいました。

主治医のところに行くと、主治医は話し始めました。

「笹野さん実はですね、ご家族の方から肝臓移植の申し出がありましたので今日はそのお話しをさせて頂こうと思います。」

「エッ? 肝臓移植ですか?」

「そうです。肝臓移植です。」

主治医はそう言うと、しばらくの間肝臓移植について説明し、「私は肝臓移植の専門ではありませんので、大学病院を紹介します。そちらで更に詳しい説明を受けて下さい。」と言いました。

肝臓移植への疑問や不安が出てくる

私は全く考えてもいなかった肝臓移植の話しだったので、とても驚き、戸惑ってしまいました。

私は抗ガン剤治療の準備ばかり考えていたので本当に『まさか?』という気持ちでした。

しかししばらくするといろいろな疑問や不安が沸き上がって来ました。

『ドナー(肝臓提供者)なんてそんに簡単に見つかるのか?』

『仮に見つかったとしても適合するのか?』

『それよりなにより肝臓移植は一体いくら位かかるんだ?』

時間が経つにつれ、次から次へと私は肝臓移植への疑問と不安が出てきました。

先生、私の肝臓を使って下さい!

私の頭の中でそんな事がグルグルしていた時でした。

妻がいきなり主治医に言いました。

『先生、私の肝臓を使って下さい!』

『な、なに言っているんだ?!』

私は妻の言葉に本当にビックリしてしまいました。

しかし、それと同時に『そんな事は絶対にさせる訳には行かない。』と考え、『先生、申し訳ありませんが、肝臓移植は全く考えていません。』と打ち切るように言いました。

 

⇒次ページ 13:肝臓移植ドナーが『家族』は考えられない
闘病記年表に戻る