私は外来が休日となる日曜日以外は毎日点滴を受ける日々が続いていました。

毎日毎日単調な生活ではありましたが、肝臓がんの腫瘍が3つも消えた事、そして間近に迫っていた末娘の結婚に出る事が私の生活の活力源になっていました。

ある日、子供達夫婦が自宅に集まり、末娘の結婚式の話しで盛り上がっていました。

冗談も交えながらの会話で皆で笑い合いながら話していました。

ただ、私は笑いすぎると胆汁のチューブを止めてあるわき腹が痛み、『イタタタッ』と笑いながら痛がるとそれを見ている家族がまた笑う。

久々の家族の笑顔に私はホッとしました。

生きる喜びを感じました。

胆汁が不安定なので病院へ

しかし、私の身体はまた調子が不安定になり、結婚式が近づくにつれ、胆汁の出る量がまた増え始めていました。

何とか持ちこたえようと、点滴に加え、自分でも一生懸命に水分を摂っていましたが胆汁はそれ以上に出ている様子で今までの経験から考えても、また脱水症状を起こしかねない状態くらいになって来てしまいました。

私は脱水症状を起こす前に先生に相談してみようと思い、病院へ行きました。

主治医には娘の結婚式が間近に迫っている事も話しました。

『笹野さんわかりました。病室が空くまで応急室で点滴をしましょう。』と言ってくれたので私も『お願いします。』と伝えました。

結婚式まであと3日、私は祈るような気持ちで点滴を受けました。

注射の後、突然意識を失う

応急室で2本目の点滴を受けている途中だったと思います。

『笹野さん、病室のベッドが用意出来ました。看護師さんが迎えに来ますからもう少し待っていて下さい。』主治医が言いに来てくれました。

その後、主治医の指示で看護師さんが私に注射をしました。

2本目の点滴が終わり、別の看護師さんが私を迎えに来ました。

私と妻は看護師さんと一緒に病室まで歩いて行きました。

私はベッドに座り、妻と結婚式の話しをしていました。

『脱水症状にさえならなければ大丈夫だ。結婚式頃までにはまた安定してくるだろう。』

そんな話しをしながら、パジャマに着替えようとベッドから立ち上がった瞬間、私は突然意識を失いました。その後の事は全く記憶がありません。

気が付くと、そこはさっきの病室ではなく、集中治療室でした。ベッドの横には妻が心配そうに私を見ていました。

私は何が起こったのか全く分からない状態でした。

『お父さんが「着替える」と言ってベッドから立ち上がった瞬間、意識を失ったの。それも後ろにいた私の方に。あまりの突然の事で本当にビックリしたんだよ。でも意識を失った時、私の方に倒れて来てくれて良かったよ。もし逆側だったら床の上に頭をぶつけて、それこそ大変な事になっていたかもだから。考えただけでもゾッとするよ。』

妻の話しを聞いて私自身、それはもうビックリしました。

『しばらく絶対安静なので結婚式は無理ですね。』

私の意識が戻ったことを聞いて主治医が様子を見に来ました。

『笹野さん、意識が戻って本当に良かったです。ただ、数日間は絶対安静にしていないとダメです。』

『エッ?結婚式は?』

『無理ですね。』

その後、妻が言いました。
『お父さん、今の状態では本当に無理だと思うから私からみんなに話しておくよ。寂しいけど結婚式は私ひとりで行くね。お父さんは今はとにかく一日でも早く退院出来るように頑張ってね。』

『そうは言っても。バージンロードはどうするんだ?』

『仕方がないから長男にやってもらおうと思っている。』

私の落胆は一言では言い表せないほどショックでした。

倒れる直前、看護師さんに打ってもらったあの注射が原因なのか?

何故あの時、気を失ってしまったのか?

私自身、全く分かりませんでした。

この時ばかりは自由にならない自分の身体を恨みました。

生きていられる事に感謝はしていましたが、父親として娘の晴れの日に立ち会えないという悔しさ、無念さは、時が経った今でも心に残っています。本当に無念でした。

結婚式の前日

娘の結婚式の前日、私は集中治療室から4人部屋の一般病棟へと移りました。

私はまだ、諦めきれず、点滴台を押して歩いてみたりしていました。

しかし、フラフラして真っ直ぐ歩くことも困難な状態でした。

虚しさや悔しさ、様々な気持ちが心の底から込み上げてきました。

午後、妻がお見舞いに来ました。

『子ども達には話しをしておいたよ。残念がってたけど、今はお父さんの身体が良くなることが一番だからって、子ども達も言っていたよ。』

妻は私の気持ちが良く分かっているだけに、言葉を選んでしゃべってくれているようでした。

体調不良で娘の結婚式に出られず:肝臓がん末期闘病記


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